ネットワークエンジニア 担当課長 土屋 孝夫

現在は某国内大手キャリアの研究開発センターに勤務し、携帯電話のコアネットワーク商用化の後方支援をしています。ネットワークエンジニアとしてこの業務に携わって2年が経ちましたが、私がこの業界に入ったのは17年前。その頃はまだ周りにネットワークの知識を持つ人はほとんどいませんでしたし、インターネットという言葉すら一般に普及していない時代でした。昨今では家庭にも光回線やADSLがひかれ、インターネットも当たり前になりましたが、当時は日本全国でも数箇所しかWebサーバがなく、研究所で実験をしていました。そのような頃からこの仕事に携わり、時代や技術の進歩、インフラ部分が整備されてコンテンツが充実してきた今日を見ていると、ネットワーク分野のあまりある可能性を感じずにはいられません。
私は、ネットワークを専門としたエンジニアではありますが、20年近いキャリアから、当然ながらプロジェクト全体のリーダーとしての立場や、後続の社員の育成なども重要な業務です。
エンジニアとして大きな転機を迎えたのは、入社10年目。今から7、8年前のことです。それまである企業の研究所に技術者として配属されていましたが、30歳を機に異動になりました。今思うと、研究所の仕事ではなかなかエンド・ユーザーが見えず、コスト意識やユーザー・ニーズを見極める意識が薄かったように思います。しかし研究所を離れてからは、「お客様の立場で」という仕事の姿勢になり、同時に部下を育成する機会も徐々に増え、ネットワークそのものに携わる機会は少なくなりました。
最初の10年がひたすら技術に特化し、ネットワークエンジニアとして研究・開発、作業を行ってきた第一のステージとすると、30歳を境にした後半の10年が第二のステージであり、今その終盤を迎えようとしているのかもしれません。

年相応のキャリアというものが必ずありますし、お客様からの要求もキャリアで変わってきます。そのことはかなり意識して仕事をしていますが、20年目を迎えるにあたり、ひとたびネットワークの技術者として立ち戻りたいという希望もあります。それは自分自身で実作業をしたいということではなく、指導者としてでもネットワークを身近に感じる環境にいたいということです。それは先述したネットワークの可能性に加え、進化のスピードがとても速いこの業界で、今まで蓄えた知識や技術が衰えてはいないだろうかという危機感を、技術者として常に持っているからです。現在は、お客様の仕様に沿ったものを実現させることが主務ですので、今後は大規模なネットワークに関わる新しいサービスの立ち上げを、企画から参加しチャレンジしたいですね。

今後、この業界を目指す方は恵まれていると思います。私がこの仕事を始めた頃とは比較にならないほど情報がたくさん出回っていて、やる気さえあればいくらでも吸収できる環境が整っています。そのため常にアンテナを張っていないとすぐに追い抜かれてしまうところもあるので、IT業界において情報収集は非常に大切だということも覚えておいてください。
私もかつて様々なメーリングリストなどを活用し、積極的に情報収集を行ってきました。Webや書籍だけでは、込み入った複雑な技術や情報は収集が難しいものです。日常的にメーリングリストなどで新しい技術動向を探索し、行き詰まった時に解決のきっかけとなるような事象を事前に蓄えておくことが大事なことだと思います。